エピジェネティクスとは,DNAの塩基配列によらない遺伝子発現制御に関わる機構で,遺伝子の発現やDNAの複製,組換えなど様々な生命現象に関与しています。エピジェネティクスには,DNAのメチル化(メチレーション),ヒストン修飾,クロマチン再構成,ノンコーディングRNAによる制御が関わっています。エピジェネティックな制御に変異が起こると,がんや神経変性疾患,発生学的異常を引き起こす可能性が示唆されています。 | ![]() |


![]() |
メチル化/ヒドロキシメチル化DNA/メチル化RNAメチル化DNA/RNAに関連する研究用製品・受託サービスをご紹介します。 メチル化DNA関連製品の詳細 5-hmC関連製品の詳細 5-fC定量キットの詳細 メチル化RNA関連製品の詳細 |
![]() |
ヒストン修飾各種修飾ヒストン(アセチル化,メチル化,リン酸化)やヒストン修飾に関わるタンパク質(Histone Acetyltransferase, Histone Deacetylase, Bromodomainなど)に関する製品をご紹介します。 詳細 |
![]() |
DNA/ヒストン免疫沈降・ChIP核抽出物の精製,メチル化DNA/修飾ヒストン/クロマチン免疫沈降(ChIP)などに関連する製品をご紹介します。 詳細 |
![]() |
エピジェネティクス研究用抗体メチル化/ヒドロキシメチル化DNAや修飾ヒストン,およびそれら修飾に関わるタンパク質の検出・免疫沈降などに有用な各種抗体をご紹介しています。 詳細 |
![]() |
次世代シークエンス(NGS)用ライブラリー構築キットDNAメチル化研究にも利用可能な次世代シークエンス用ライブラリー構築キットをご紹介します。 詳細 |
![]() |
受託サービス各種メチル化解析受託サービス,創薬支援サービスがあります。メチル化サービスはフローチャートからご希望のサービスをお調べいただけます。 詳細 |
![]() |
超音波破砕装置次世代ChIPアッセイ,次世代シークエンシング用のクロマチン/DNAせん断などの幅広い用途に使用できる破砕装置です。 詳細 |
![]() |
その他オススメ製品 Direct-Zolフェノール溶解液をそのままカラム精製できるRNA精製キットです。Small RNA・miRNAを含む幅広いサイズのRNA精製や,メチル化解析用RNAの精製などに最適です。 詳細 |
- [EPG社]MethylFlash ELISA Easy Kit 25%OFFキャンペーン[~ 2016/07/25]

キャンペーン期間中,Epigentek社(メーカー略称:EPG)のMethylFlash ELISA Easy Kitを25%OFFのキャンペーン価格でご提供します。
MethylFlash ELISA Easy Kitは,使用実績が豊富なMethylFlash Kit(キャンペーン対象外)の改良版です。従来品と比較し,より速く,より安定に,より正確な測定が可能です!ぜひこの機会をご利用下さい。
詳細はこちらをご覧下さい。
- 注目の新製品
-
- 製品名
- 備考
- 詳細
-
- EpiTitan Histone Peptide Array
- 様々な修飾を受けたコアヒストン(histone) およびその変異体のビオチン化したペプチドを,ストレプトアビジンをコートしたガラススライド上にスポットしたペプチドアレイです。
- 詳細
- フナコシ エピジェネティクス解析受託サービスフライヤー

DNAやRNAメチル化など,あらゆる解析手法に対応した受託サービスをご提供します。
PDFのダウンロードはこちら。 314 KB [日本語版フライヤー]
エピジェネティクス研究関連製品の新着情報については,こちらをご覧下さい。
- PDF版カタログ
- その他関連カタログ
- エピジェネティクス用語解説
DNAのメチル化/ヒドロキシメチル化(5-mC, 5-hmC)
■ DNAのメチル化(メチレーション)
DNAは,DNAメチルトランスフェラーゼと呼ばれる酵素の働きによって,5’-CG-3’のシトシン基(CpG)がメチル化されます。DNAのメチル化によって,遺伝子の発現や細胞の分化,発生といった様々な細胞内の働きを制御しています。また,DNAのメチル化は様々な疾患のバイオマーカーとしても注目されています。
■ 5-ヒドロキシメチルシトシン(5-hmC)
5-ヒドロキシメチル化シトシン(5-hmC)は,様々な生物種に存在するシトシン修飾体の一つで,ヒトやマウスの神経組織では高レベルでその存在が確認されています。幹細胞の自己複製,がんの発症や進行,神経疾患など多くの分野においてエピジェネティックな潜在因子として注目を集めています。ここ数年,DNAのヒドロキシメチル化についての研究が行われてきましたが,その生物学的な役割については未だ不明な点が多く残されています。
“6種類目の塩基”と考えられている5-hmCは,DNA脱メチル化経路において中間体としての役割を担っていると推測されていますが,それ自体が新たなエピジェネティックな調節を担っている可能性があります。

カテゴリ | 因子名 |
---|---|
DNAメチル基転移酵素 | Dnmt1 |
Dnmt3a | |
Dnmt3b | |
メチル化DNA結合タンパク質MBD(Methyl-CpG binding protein)タンパク質ファミリー | MeCP2 |
Mbd3 | |
Mbd1 | |
Mbd4 | |
Mbd2 | |
メチル化DNA結合タンパク質 メチル化DNA結合Znフィンガータンパク質ファミリー | Kaiso |
Zbtb38 | |
Zbtb4 | |
Zfp57 | |
DNA脱メチル化酵素 | TET (Ten-Eleven Translocation) |
IDH1/2 |
DNAメチル化/脱メチル化に関わる因子
物質名 | CAS No |
---|---|
5-アザシチジン(5-Azacytidine) | 320-67-2 |
ゼブラリン(Zebularine) | 3690/10/6 |
RG-108 | 48208-26-0 |
DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)阻害物質
■ TET(Ten-Eleven Translocation)
TET(Ten-Eleven Translocation)はエピジェネティクス研究における新しい因子で,5-mCを5-hmCへ変換する反応を触媒します。TET1/TET2はES細胞で,TET3は卵細胞で高発現しており,転写調節において重要な役割を果たしていると考えられています。2009年に,TET1(Ten-eleven translocation 1)タンパク質が,DNAの脱メチル化に関与している可能性がある因子として同定されました。5-メチル化シトシン(5-mC)の脱メチル化において,中間体として5-ヒドロキシメチル化シトシン(5-hmC)を経由すると考えられており,TET1は5-mCを5-hmCに酸化する反応を触媒します。TET1は最初,急性骨髄性白血病に関与する遺伝子転座から発見されました。TET1の変異は様々な悪性腫瘍や発達障害に関与していると考えられています。また胚性幹細胞において,多能性に関わる因子のプロモーターを脱メチル化することで,多能性の維持にも関与しているという報告もあります。

RNAのメチル化
RNAのメチル化はmRNA, tRNA, miRNAなどの様々なRNA種の中で起こると考えられています。翻訳後修飾としてこのRNAのメチル化は,エピジェネティクス機構において重要な役割があると考えられています。N6-メチルアデノシトシン(m6A)が様々なRNA種の中で最も共有した豊富なメチル化修飾として知られています。また,5-メチルシトシン(5-mC)のメチル化も様々なRNA種に共通して見られます。最近の研究では,m6Aや5-mCのRNAメチル化がRNAの安定性やmRNAの翻訳のような様々な過程の制御に影響を与えていることや,RNAのメチル化の異常が疾患の原因となっていることが示唆されています。
参考文献
- Mapping recently identified nucleotide variants in the genome and transcriptome, Chun-Xiao Song, Chengqi Yi & Chuan He, Nature Biotechnology, 30, 1107~1116 (2012). [PMID: 23138310]
- N6-methyladenosine-dependent regulation of messenger RNA stability, Wang X, et. al., Nature, 505 (7481), 117~120(2014). [PMID: 24284625]
- Long non-coding RNAs as targets for cytosine methylation, Amort T, et. al., RNA Biology, 10(6), 1003~1008(2013). [PMID: 23595112]
ヒストン修飾
ヒストンは,DNA 鎖が巻きつくコイルのような形状をした,染色体の主要なタンパク質成分です。 ヌクレオソームには4種類のコアヒストン(H2A, H2B, H3, H4)が含まれ,クロマチンの主要な 構成要素になっています。コアヒストンのN末端は,細胞のシグナル刺激に応答してアセチル化/脱アセチル化, リン酸化,メチル化など様々な転写後修飾を受け,遺伝子発現に直接影響を与えます。
■ ブロモドメインとは
ブロモドメインはヒストンのアセチル化リジンを認識し,制御タンパク質を集めてクロマチン構造や遺伝子発現を制御する機能が知られているタンパク質ドメインです。■ ヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)とは
ヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)は,ヒストンのε-N- アセチルリジン残基からアセチル基を除去するタンパク質です。ヒストンのアセチル化/脱アセチル化は遺伝子発現の亢進/抑制に強く相関しています。■ ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)とは
ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)は,ヒストンのN末端にあるリジン残基へアセチル基を付加する酵素で,遺伝子調節,DNA合成および修復を含む数多くの細胞機能に関与しています。■ ヒストン脱メチル化酵素とは
ヒストンのリジン残基のメチル化は重要なエピジェネティックな制御機構のひとつです。特にヒストンH3の27番目のリジン残基(H3K27)はゲノムの抑制領域との関連で注目されています。当初H3K27のメチル化は不可逆反応と考えられていましたが,その後多くの脱メチル化酵素が発見されたことにより,H3K27の脱メチル化がヒストン動態で重要であると考えられるようになりました。現在までにH3K27特異的ヒストン脱メチル化酵素(JMJD3(KDM6B)およびUTX(KDM6A))などが同定されており,これらは,がん遺伝子との関連も明らかになっています。例えば前立腺がんでのJMJD3の遺伝子増幅,腎臓がんや多発性骨髄腫など複数のがんにおけるUTX遺伝子変異の報告があります。JMJD3 / UTX活性の測定や阻害物質の発見は,エピジェネティックな遺伝子の活性化/不活性化の制御機構の解明や,がんの診断,治療への応用に重要であると考えられます。■ SIRTとは
SIRT(Sirtuin)は,クラスⅢHDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)に属するトリコスタチンA非感受性のリジン脱アセチル化酵素で,NAD+依存的にタンパク質のリジン残基を脱アセチル化します。ヒトでは7種類のSIRT(SIRT1~SIRT7)が存在することがわかっています。■ EZH2(Enhanced of Zeste Homolog 2)とは
ヒストンメチル基転移酵素であるEZH2は,EED,SUZ12,RbAp48,AEBP2とともにポリコーム抑制複合体2(PRC2)を形成し,ヒストンH3の27番目のリジン(H3K27)をジメチル化およびトリメチル化することによって,遺伝子転写を抑制します。EZH2の過剰発現は,様々な固形腫瘍形成に関与しているとされています。 近年では,EZH2変異体Y641F/N/S/H/Cがリンパ腫に存在し,この変異によるH3K27のトリメチル化が亢進していることが報告されています。■ JMJD2Aとは
JMJD2Aは,ヒストン脱メチル化酵素の一群JMJD2クラスに属するタンパク質で,ヒストン脱メチル化ドメインJmjN,JmjCに加え,2つのPHDフィンガー,2つのTudorドメインから構成されます。JMJD2Aは,クラスⅠヒストン脱アセチル化酵素およびpRbと複合体を形成し,転写抑制を引き起こします。 この複合体中のJMJD2AのTudorドメインにより,H3K4メチル化状態のクロマチンへと複合体が選択的にリクルートされます。
■ BRG1とは
SWI / SNFファミリーはヒストンとDNAの結合性を変化させるATP依存性のクロマチン再構成因子です。哺乳動物のSWI / SNFは,1.5 MDaを超える大きな複合体を形成しており,BRG1は触媒サブユニットとしてこの複合体に含まれています。BRG1は,中心的な触媒活性を担うsnf2 helicase様ドメインに加え,ヒストンのアセチル化残基に結合するブロモドメインをC末端領域に有しており,このBRG1ブロモドメインの結合活性は,通常のBETファミリーブロモドメイン阻害物質では阻害されないことが知られています。また,SWI / SNF複合体に含まれるいくつかのサブユニットはがん抑制活性を示し,非小細胞肺がんの多くの症例においてBRG1の変異や発現欠損が報告されています。■ LSD1とは
LSD1(lysine-specific demethylase1)は,ヒストン H3 のメチル化またはジメチル化されたリジンから,特異的にメチル基を除去するクロマチン修飾酵素の1 つです。創薬ターゲットの候補因子として注目されています。クロマチンのアクセシビリティ
クロマチンにおける遺伝子調節エレメントのアクセシビリティは,様々な遺伝子制御において重要です。 遺伝子調節エレメントが被覆されたヌクレオソームは,DNAへの転写因子のリクルートを阻害します。 ヌクレオソームは,DNA約147塩基がヒストンオクタマーに巻きついた構造物で,クロマチンの基本ユニットです。
クロマチンと転写因子の相互作用に関する機能解析をする上では,ゲノムに配位されたヌクレオソームについてクロマチンアクセシビリティをマッピング解析することが重要です。概して,転写因子やDNA結合タンパク質のDNAへのアクセシビリティはクロマチンの状態に依存し,遺伝子の転写活性に影響をおよぼします。 近年,DNAのメチル化修飾により,ヌクレオソーム構造をコンパクトに圧縮させることが報告されています。また,ヌクレオソームの配位の仕方により,DNAのメチル化パターンが変化することも明らかになっています。このことから,DNAメチル化修飾とヌクレオソームの配位の情報を,同一のDNA分子から得ることは,遺伝子発現を調節するクロマチンアクセシビリティの理解を深めることに繋がります。
- お役立ち情報(外部リンク)
ZYMO RESEARCH社やEpigentek Group社では,エピジェネティクス研究に関連する製品や,文献情報を豊富に取り揃えています。下記の画像をクリックすると該当ページへと移動することができます。